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  • いが野の農園の仲間たち

初卵の背景


初卵(ういらん)とは鶏のヒナが若鶏になって初めて産んだ卵のことを言います。

私たちは自然の理に適った鶏を育てようとしています。


理に適った鶏は肉体的にも精神的にも健康は状態で育ったものです。肉体的な健康は活発に運動出来るスペースと安全・安心な餌と水が必要ですし、精神的な健康は、快適でストレスの少ない鶏舎環境と何より飼育する人間の健康・健全さによるものが多いと思います。鶏の健康は、卵から孵化したその日からの飼育の仕方で決まると言っていいでしょう。


雛鳥の生活環境

孵化したヒヨコ達が入る部屋(育雛枠と言います)は堆肥熱育雛というやり方で、あたかも母鶏の羽根の下で育てられるのと同じような状況を作り出してあげます。

堆肥熱とはヒナの寝室になる場所の地面を深いところで50cm程度の深さまで掘り込んだ穴に稲ワラと鶏糞と硫安を交互に重ねて踏み込んだもので、これが熱源となります。

90cm四方の寝室は「熱室」と呼ばれ、断熱効果があるモミガラを中に詰めた板の壁とやはりモミガラを詰めた蓋(天井になる)に守られた空間で、ヒナにとっては、母鶏の羽毛の下と同じ、安全で暖かい寝場所になります。熱室のつづきの同じ広さの部屋を「温室」と呼んでいて、生まれたその日に生活をする場所となり、そこには玄米と飲水の容器が置かれます。

 この2つの部屋で3日間過ごした後、雛用の枠を取り、大きな部屋に開放するまでの約40日間を過ごす空間は、温室の延長上に毎日90cmずつ4回にわたって3.6mまで拡げられ「冷室」として思いっ切り走れる部屋になります。飲水の容器は、枠の延長に合わせて熱室から一番遠い所に置きます。ヒヨコがやってくるのは、まだ寒さが終わらない3月中旬なので、水を飲むために冷室の一番遠い所まで行かなければなりません。水を飲んだ後、冷えた体を暖めるために熱室まで走って戻って行く姿は、力強さを感じる瞬間でもあります。この往復でヒナの足腰が自然に鍛えられていきます。「熱室」は堆肥熱で暖かさが保たれ真っ暗で、ヒヨコたちが安心できる場所です。初日の夕方、薄暗くなってきたときに、寝る場所を探すヒナ達に「熱室」に入るように私達が手助けをして誘導してやります。いわゆる「刷り込み」をしてあげるのです。


雛鳥のごはん

ヒヨコがやってきた最初の3日間玄米だけを与えるということも「刷り込み」です。排泄効果の高い玄米は、ヒヨコたちにビタミン欠乏症を起こさせます。ビタミン欠乏状態になったヒヨコに対して青草を細かく刻んだものを少しずつ与え食べるように仕向けます。この刷り込みによって成長しても草を沢山食べることができる鶏となります。青草のセルロースを消化吸収させるため腸を長くしてやる必要があります。胃腸を鍛えるためには、初夏になってから粗飼料のモミガラを日を追って順次増量した餌に切り替えてゆき、秋口にその割合がピークになってからモミガラの割合をだんだん減らして、秋の終わり頃までの長い時間をかけて成鶏と同じ配合の餌へと変えてゆきます。自然界のヒナは色々な物を食べます。人が飼育するためには人が与えてあげなければなりません。ビタミンやミネラル源として腐植土(木の葉と土壌微生物が分解したもの)、砂といったものも与えます。


このようにヒヨコの飼育をしてゆくためには注意深い観察によって、ヒヨコの欲しているものや環境などを人が察知しなければなりません。以上のことを確実にやっていくことですが、それを実施するためには飼育する人がそれに見合った心(愛)で向き合う必要があります。このようにして健康な肉体と心を持った鶏を育ててゆくことが鶏の飼育だと思っております。


こうして育った鶏が夏の終わりから秋口にかけて、初卵を産んでくれます。エネルギー溢れた卵を産んで、食べた人の心と体を健康にしてくれるのは鶏達自身の力です。私たち人間が卵を産んだり、作物を作り出したりしている訳ではない、というのが私達の農業の基本的な考え方です。





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